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真ん中高め。 絶好球だ。 少しずつ俺に迫ってくる白球は『打ってみろ』と言っているような迫力だった。 俺はその言葉に答えるように左足を踏み込んで、おもいっきりバットを振った。 俺の感覚ではショートの頭上を抜けていく二塁打、もしくは三塁打……。 しかし、またキャッチャーミットの中には白球が吸い込まれていた。 空振り……。 一瞬大きな応援が全く聞こえなくなった。 夏の風は心地よく俺を慰めてくれるように吹いていた。 背番号8のきれいなユニフォームは、どこか心細く見えた。
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