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ライは相変わらず相手と怒鳴りあいをしている。しかし大通りを行く人々はそんな様子に目もくれず過ぎ去る。
喧嘩やスリなどの犯罪はここの通りでは日常的なこと。
だから
誰も声をかけない。
誰も助けはしない。
誰も関わろうとしない。
この街の影の集まりがこの大通りなのだ。
「あーいてぇいてぇ・・・こんなことしてタダですむと思ってんのか?あぁ!?」
柄の悪い不良を演じるライを見てテトラは思う。
(・・・ライって仕事の時すっごい楽しそうだよな・・・・
・・まさかこれでストレス解消してるのか!!?)
そんな事を考えながらも仕事はこなす。相手がライに夢中になっている今がチャンスだ。
財布目がけて手を伸ばした。
――――そのとき
「おっやぁ~盗みは善くないねぇ~“ソラ”の少年」
「!!?」
突如背後より響いた鈴色の声。
それと同時に頬に当たる冷たい銀の輝き。
(何時から背後にいたんだ!?)
気配すらなかった・・・。人一倍気配に敏感な自分がいままで気付かないことがなかっただけに焦りを覚える。額からつうと冷たい液体が伝った。
「盗みだと?!」
鈴色の声に鴨が反応し振り向く。
ライは驚きで目を見開いた。
「あらら気付かれちゃった~」
自分のせいで気付かれたというのに鈴色の声を持つ青年は何処吹く風。
「・・・おまえは・・・」
「ふふ、まだ秘密・・・にしておこうかな“ソラ”の少年」
人差し指を唇にあてるとそう答えた。青年の金の髪が風で揺れる。
「そろそろ時間かなぁ~・・・さぁ、行きなさい」
歌うように囁くと鈍く光る〈ナイフ〉をテトラの頬から離した。
その瞬間を待っていたかのようにライが走りだした。走りざま動けずにいるテトラの腕を掴みその場から逃げ出す。
「お、おい待たないか!!」
鴨の声が聞こえたが振り向くことなく走る。
青年が零した呟きに気付かぬまま二人は走った。
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