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* * *
「さっむぅぅっ!」
場所は変わっていつもの集合場所。
時刻は昼前だが、太陽のないこの街では光の温もりなんて無いに等しい。
テトラは体を擦りながらヒュウヒュウと吹き続ける風を恨ましげに見た。
「なぁライー・・・そのコート「貸さないからな」・・・」
言葉を発す前に返された。テトラは肩をすくめる。
「基地みたいなの欲しい・・・」
ぽつりと口から零れた言葉。
独り言半分、訴えかけたのが半分のつもりであった。
しかし、答えて欲しいときにこそ答えは返ってこないもの。沈黙が辺りを包んだ。
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・すいませ~ん、ライさ~ん?」
耐えられずに人物を特定し訴えることにした。
「・・・なんだ」
ライはいかにも面倒くさそうな感じで応える。
勇気を出してテトラは伝える。
「基地・・・欲しいッス」
「・・・・・・・・・・・はぁ?」
長い間の後、聞き返してきた。とても嫌そうに、眉を思いっきり寄せて。テトラは悟った。
これはやばい、と。
「いや、だからね基地が欲しいんですよ。暖かいし。なんか落ち着くし、寒くないし、風が・・・」
弁解が弁解になっていない。
「これ以上何も話してくれるな、テトラ」
ライはテトラに一歩寄った。
そして
「お前が何か言いたそうにしていたから珍しく機嫌がいい俺が仕方なく聞いてやろうとしたというのに、なんだ?口を開けば基地だと?寝言は寝て言え、このバカ犬が」
息もつかず言い切った。
「な、いいじゃんか基地!寒くないんだぞ!?」
「その理由だったら絶対認めない。俺は今も寒いと思わないしな」
「なんで!!?」
「・・・お前、自分がどんな格好をしてるかわかってるのか?」
ため息をつきながら言われ、テトラは自分の服を見た。
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