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「ライ゙ぃ・・・」
全速力以上の速さでライの元へ戻ったテトラ。
涙声で彼の名前を弱々しく呼ぶ。
「どうした?何があった?」
ライは読みかけの本を閉じ、テトラに駆け寄る。
「あのな゙ぁ゙、あのな゙ぁ゙」
「落ち着け。何があった?」
瞬きをして溢れた涙を指で拭ってやる。
テトラは顔を上げると一言はっきりと告げた。
「来て」
次の瞬間、二人の周りの景色が流れた。
* * *
「おい・・・テトラ・・・」
ライはテトラに手を引かれながら走っていた。
が、風の力を持つテトラに常人のライが付いていけるはずがない。
体力的に限界を感じ制止の声をかけようとしたとき、ピタリと足を止めた。
テトラは濡れた顔を拭いながら
「ここを基地にしたい」
目を見ることなくそう言った。
ライは連れられた場所を見渡す。そして気付いた。
“空色ノ唄”に。
はっ、と息を飲む音が聞こえた。
テトラは汗をかいた手を握り締め返事を待つ。
ライは乾いた唇を舐める。
十分過ぎる間を置いて、口を開いた。
「――――ここを基地にするぞ」
無表情で言ったライ。
「今この時からここは俺等の基地だ」
対照的にテトラの顔に表情が溢れる。
「あぁ!!」
晴れやかな顔で彼は頷いた。
その目からは一滴、煌めく涙がつたっていた。
―――今日からここが俺達の基地だ
俺達が一緒にいてやるからな
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