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「アンタも毎日ここにきてよく飽きないわねぇ」
女は呆れたような関心しているような曖昧な表情を浮かべている。
「うん!だってお姉ちゃんの歌私大好きだもん!」
答えのようで答えになっていない理由をニッコリと笑いながら言う少女。
「ったく嬉しいこと言ってくれるんだから」
その笑みにつられたように女もニッコリと笑った。
* * *
「よしっ!今日はアンタにとっておきの歌聞かせてあげる」
くしゃっと少女の頭を撫でるとリュートを取り出した。
「ねぇ、『かたりうた』って知ってる?」
少女は首を横に振る。
女は微笑を浮かべ、腰を下ろした。
「かたりうたってのはね」
リュートを腕に抱き、ゆっくりと文字を紡ぎだす。
「過去の物語や出来事を色んな人や後の世代に歌って伝えていく歌のことよ」
優しく弦を弾くとポロロンと音がなった。
「?」
「アハハ、なんだかよくわかならいって顔してるわね。まぁ、聞いた方が早いか。そこ、座りな?」
女は優しく少女を・・・客を特等席へと導く。
目を輝かせて待っている少女にニヤリと笑うと
優しい旋律をリュートで奏で始めた。
「さぁさ夕暮れ鐘が鳴るまで私の歌を聞いておゆき?
今日は彼らの物語を歌いましょう
耳を澄ましてよく聞いて
昔昔、今から遠い昔
機械にうめつくされた街があった――――
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