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「昨日も思ったんだけどさ、」
テトラがアスナに話しかける。アスナも「ん?」と顔を向けた。
「アスナって怪力人間なのか?」
・・・。
真剣な眼差しで訊ねる彼にきっと悪意はない。
きっと常識、マナーといった類のものを知らないのだ。
そう無理やり思い込み、アスナは笑みを浮かべて答えた。笑みといっても引きつったものだが。
「私には“力”があるからねぇ」
それを聞いて何故か嬉しそうにしたテトラ。
アスナは嫌な予感がした。
「おぉやっぱ怪力なのか!でも筋肉もりもりには見えないけど・・・あ、隠してるのか」
嫌な予感は的中した。
テトラは見事に間違えて捉えていた。
隣で聞いていたライが溜息をつく。
「なあなあ力あるっていうなら俺と力比べ・・・」
「“古から受け継ぐ力”のことだよ!」
まだ楽しげに話しているテトラを遮り、訂正、補足する。
「アタシが筋肉もりもりなわけないじゃないか!というか誰が怪力人間よ!誰が!」
まったく、と呆れた様子のアスナ。
テトラは楽しげに笑っているのかと思いきや、笑みさえ浮かべていなかった。
アスナが話出したあたりから表情のない顔に変わっていた。
唯一読み取れるとすれば“困惑”。
「・・・お前も“力”を受け継いでるのか?」
変化を感じ、アスナの表情も固くなる。
「『も』ということはアンタも使えるの?」
静かな問い。
「・・・俺は“風”」
そっけなくこれ以上聞かないでくれよと言いたげに答えたテトラ。
そして返す。
「アスナは何なんだ?」
アスナは肩をすくめた。
「ご存知のように怪力人間のように見える力よ。まぁ実際は違って・・・“念力”に近いもの・・・とでも思っていてくれたらいいわ」
「よくわかんないけど・・・」
「実はアタシもまだよくわかってないんだよ」
アスナは困ったように笑った。
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