君に贈るBL短編集

悲しみの向こう側に

｢幸せにするよ、カナのこと｣

蜂蜜色の髪をした俺より幾分か年下の響に毎日のように紡がれる言葉。

でも、そんなこと言わないで欲しい。幸せを求めてしまうじゃないか。

簡単に思い付く響との未来。それはきっと本当に幸せで、俺は笑ってて響は笑う俺を見て微笑んでくれる。まるでおとぎの国の王子のようなその甘い顔を俺に見せてくれるはずだ。

そりゃたまには喧嘩もするだろうけど、それでも俺達は離れることはないだろう、と。

例えばそれが皺くちゃなじいさんになったとしても縁側で一緒にお茶を啜ってる光景なんてたやすく思い付くけれど。

｢なぁ待てよ。じゃあ俺は？お前は俺を捨てるのか？｣

まとわりつく蓮の声。
本当に蓮の言った言葉ではないけれど、俺の中のあいつは響に揺れる心を攻め立てる。
本当は蓮も俺の幸せをどっか遠いとこで願ってくれてるかもしんないけど。だけど俺の心は俺が幸せになることを許さない。