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雨。
ひたすら、雨
「はぁ……はぁ………ぐっ……!」
止む気配など微塵も感じさせないほどの、激しい雨……いや、雷雨。
月の光など、見えるわけもない。
「逃がすな! なんとしてでも捕まえろ!!」
「くそ……っ!!」
降りしきる雨の中を必死に走る、一人の黒髪の少年。
その後ろには、大小入り乱れた人々の塊。上は老人から、下は子供まで。
統率がとれていないのか、全員てんでバラバラに動いている。
だが、彼らの目的は全員一つ。
「おい! あの野郎森に入っていったぞ!!」
「何ぃ!? 奴め森に隠れる気だな!?」
――追えぇぇ!!
――おおぉぉぉぉ!!
闇夜の森へと、繰り出す人々。
「何で……何でだよ……!」
走りながら
少年は思う。
「み……みんなのためじゃ……なかったのかよ……!!」
あの日の思い出。
みんなのため。世界のため。
そう信じて、今日まで毎日毎日ひたすら頑張ってきた。
――それなのに――それなのに
「どうしてだよぉ……親父ぃ……!!」
もういやと言うほど雨で濡れているのに、彼の目が――さらに濡れる。
ぬぐってもぬぐっても
止めどなく溢れてくる。
あの赤い光景が
頭から離れない。
「絶対に……生き延びてやる……!」
暗く深い森を
少年は駆けていく。
あてもないのに
何かへ向かって――まっすぐと駆けていく。
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