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「……んッ」
小鳥が囀ずっている。
日が明るくなってきている。
どうやら朝のようだ。
「っあー。何っか懐かしい夢見た……」
ガシガシと頭を掻きながら、男は──ヴィスは寝床のハンモックからむくりと体を引き起こす。
眠い目を擦り、盛大な欠伸を一つしながら伸びをするその姿は、人間誰しもが経験する様であろう。
彼は地面から数メートルとない高さのそこから飛び降りると、軽く動いて体をほぐす。
薄暗い洞窟。
湿った地面。
ひんやりとした空気。
──いつも通りだ。
ここを寝床としてもう十数年と経つが、この光景は相変わらずだ。舞踏会でも行えそうな広さと高さを誇るこの洞窟内。彼はその一角にある突き出た岩にハンモックを設置している。あまりに広すぎるので、すぐ近くに壁が無いと落ち着かないからだ。
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