魔法使い

3/4
前へ
/16ページ
次へ
**** 「……んッ」 小鳥が囀ずっている。 日が明るくなってきている。 どうやら朝のようだ。 「っあー。何っか懐かしい夢見た……」 ガシガシと頭を掻きながら、男は──ヴィスは寝床のハンモックからむくりと体を引き起こす。 眠い目を擦り、盛大な欠伸を一つしながら伸びをするその姿は、人間誰しもが経験する様であろう。 彼は地面から数メートルとない高さのそこから飛び降りると、軽く動いて体をほぐす。 薄暗い洞窟。 湿った地面。 ひんやりとした空気。 ──いつも通りだ。 ここを寝床としてもう十数年と経つが、この光景は相変わらずだ。舞踏会でも行えそうな広さと高さを誇るこの洞窟内。彼はその一角にある突き出た岩にハンモックを設置している。あまりに広すぎるので、すぐ近くに壁が無いと落ち着かないからだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加