魔法使い

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「あ、起きたー?」 と、そんな言葉が、一つしかない洞窟の出入り口から聞こえてきた。 ──これもいつもの通りだ。 聞こえてきたと同時に、ドシンドシンと低い音と振動とが洞窟内に響く。 「おはよーヴィス」 「おうシェーネ」 その巨大な音の主の姿が見えてくる。彼はソレといつものように、言葉を交わす。 蒼色の鱗、一対の長い髭を持った、巨大な生物。ヴィスが縦に二、三人は入ろうかというほどの高さのソレ──この世界ではドラゴンと総称される生物だ。 「今日はキレイに晴れてるよ。朝日も無事に昇ったことだし」 「ほー、そうか? んじゃあぼちぼち朝飯でも採りに行こうかな……」 「あ、いいよいいよ。丁度いい木の実があったから、僕さっき採ってきたんだ。それ食べなよ」 「おお、そりゃありがてえ」 まるで友人同士のような会話を──否、友人同士の会話を二人は交わす。 巨大なドラゴンと小さな人間は、いつものように朝の挨拶。そして人間は川で顔を洗うと言って、洞窟の外へと出ていった。
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