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陽の光すらも入り込めない、暗く深い森の中。人里に接している場所にあるのだが、いかんせん一日中薄気味悪い空気が漂っているので人々はそうそう入ってこない。
じっとりとした湿気。昼間でも足下が見えないほどの暗さ。
そこら中に大小様々な木々が乱立しており、「人混み」ならぬ「木々混み」だ。
そんな妖しげな森の中を、さくさくとどこかへ向かって進んでいる三人の子供達の姿があった。
先頭を歩くやんちゃそうな男の子。そしてその後ろに続くもう一人の男の子と、それにくっつく女の子。二人は引っ付きあって周りをビクビクしながら見回しつつ歩いていっている。
「ねぇシグル~。もう帰ろうよ~。迷子になっちゃうよ~…」
後ろにつく男の子が、自分の前方にいるシグルと呼ばれる男の子に向かって弱気な言葉を投げかける。
「さっきからそればっかりだなぁトト!お前もしかして怖いのか!?」
その言葉をシグルは乱暴に返す。
どうやら後ろの男の子はトトという名前らしい。
「そ、そんなんじゃ…」
「でもシグルぅ…。さすがにこれはホントにヤバいんじゃないのぉ…?」
次はトトの横にいる女の子が口を開いた。
「『あの森には化け物が出るから絶対に入るな!』ってお母さんが言ってたのよぉ…?それにホントに迷子になっちゃったらどうするの?」
それに対してシグルは、手に持った細長い木の棒をブンブン振り回しながら
「まぁまぁキリア。俺は何回かこの森には入ったことあるし、化け物なんか見たこと無い!だから今日はそいつを探すんだ!」
と、子供らしい満面の笑みを浮かべながら答えた。
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