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「えぇぇ~?や、やめようよ~。食べられちゃうよ~」
「そうよぉ!食べられちゃうわ!」
シグルの意見に、トトとキリアは同時に異を唱える。
それもその筈、二人がここまでシグルに付いてきているのは、彼の「森に行こう!」という突然の提案に半ば強制的に来させられたから。化け物を探すなどという話は初耳なのだ。
「大丈夫だって!いざって時は走って逃げる!」
「化け物はそんなに甘くないと思うな……」
と、その時だった。
突然森中にズズンッという低い音が轟く。
三人は、音がした前方の彼方をハッと振り向いた。
「な、何だ!?」
「まさかその化け物じゃないでしょうね……?」
「そんなぁ……。だから帰ろうって言ったじゃないか……」
「う、うるさいぞトト!少し黙ってろ!」
ズズンッ、ズズンッ
と、音は徐々に三人の元へと近付いてくる。
ゆっくりと、しかし確実に。
三人はまさに息が詰まるような、そんな感覚を覚える。
『にん……げん……?』
例の“化け物”が。
姿を現した。
三人の前にある草木の群れの中から、トカゲのようなものの頭だけが、ぬぅっと。まるで何事なのだろうと言わんばかりに出てきている。
それだけではない。
問題は大きさだ。その頭一つ分でシグルたちの身長と同じくらいの大きさがある。そして、それが喋ったのだ。言葉を発したのだ。
それだけでもう……充分だ。
三人にとってソレを――化け物と認識するのには、充分すぎる材料だ。
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