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SCINE3,受難の火蓋1
木の陰からこっそりと覗いてみると、何やら甲冑に身を包んだ人達が三人、大きな門の前で話しをしている。
……いよいよ、さっきのは幻じゃないみたいだね。残念ながら。
森は、あの門を中心に大きく半円を描く形で途切れていた。
僕は、気付かれないように細心の注意を払いながらちょうどその円周に沿うようにして話が聞こえる位置にまで移動する。
『そうか、また天馬信仰の連中が……』
よし、話が聞こえる。
それも、ちょうど天馬さんの話題みたいだ。
『ただでさえ、ロンテースだのストライフだのが騒がしいってのにな……』
『ふん、そんなもの、所詮ただのお伽話よ。それより……そこでこそこそ隠れている不届き者を始末せねばな』
『えっ?』
『何っ?』
『ふん、お前らは注意が足らんのだ。聞かれたのが、所詮御伽話でよかったが……。とにかく、お前らはそこで警備を続けていろ。俺が捕らえてきてやる』
って、早くも気付かれてる!?
ええと、どうしよう……とりあえずおとなしく怪しいものじゃないことを説明して……って、この状況で自分のことをどう説明したらいいんだろう、僕?
ああ、もう、逃げるしかないじゃないか……っ!
思考すること一秒、身を翻して僕は一気に走り出す。
「待ていっ!」
当然のごとく追ってくる、銀の鎧を来た兵隊さん。
ああもう、訳の分からない世界にとばされて早速の大ピンチだよ……。
本当に無事帰れたらいいけどなぁ……。
そんな風に思いつつ、とりあえず今は全力で走るしかない。
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