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「チッ。思ったよりすばしっこい奴だな。おい、お前。無駄な抵抗はやめて、おとなしく捕まれ」
後ろから声が聞こえる……お互いの距離はあまり変わっていないけれど、想遠くはない距離だ。
……ていうか、それは無理……というより、無茶な相談だ。
僕自身だって、何でこんなことをしているのかわからない。
でも、さっきのやり取りからここで捕まってはいけない、ということくらいはわかるんだ。
にしても、陸上やってて良かった、かな。
それに、今はちょっとコンディションも良いみたいだ。
とてもあんな崖から落ちたとは思えない。
これは本当にラッキー、なのかなぁ。そういうには今の状況は複雑だけど。
……それともそれこそが、ここが異界である所以なのだろうか。
「待たぬ、か。ならば仕方がないな」
――捕縛
「へっ?」
男の呟きのあと、ヒュ、という風切り音と同時に、突然脳裏に妙な単語が浮かんでくる。
「capture!」
「うわぁっ!」
なんだろう、と考えるまもなく、男が叫び、足元に何かが飛んできた。
思わず足に力をこめる。
――解放
「えっ、ま……た?」
次の瞬間、僕はものすごいスピードでその場から離脱していた。
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