第一章 ~界~ 第一話 ″走"

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「チッ。思ったよりすばしっこい奴だな。おい、お前。無駄な抵抗はやめて、おとなしく捕まれ」 後ろから声が聞こえる……お互いの距離はあまり変わっていないけれど、想遠くはない距離だ。 ……ていうか、それは無理……というより、無茶な相談だ。 僕自身だって、何でこんなことをしているのかわからない。 でも、さっきのやり取りからここで捕まってはいけない、ということくらいはわかるんだ。 にしても、陸上やってて良かった、かな。 それに、今はちょっとコンディションも良いみたいだ。 とてもあんな崖から落ちたとは思えない。 これは本当にラッキー、なのかなぁ。そういうには今の状況は複雑だけど。 ……それともそれこそが、ここが異界である所以なのだろうか。 「待たぬ、か。ならば仕方がないな」 ――捕縛 「へっ?」 男の呟きのあと、ヒュ、という風切り音と同時に、突然脳裏に妙な単語が浮かんでくる。 「capture!」 「うわぁっ!」 なんだろう、と考えるまもなく、男が叫び、足元に何かが飛んできた。 思わず足に力をこめる。 ――解放 「えっ、ま……た?」 次の瞬間、僕はものすごいスピードでその場から離脱していた。
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