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「ふ……」
どれだけ沈黙があっただろう。
不意に、その奇妙な馬が再び声を出す。
「済まぬな。あまりにも頓狂な様子だったものだからつい楽しんでしまった」
「は、はぁ」
「まぁ、私は馬と言っても普通の……そうだな、お前がいた世界にも存在するような馬とは違う。見れば分かるだろうが……」
なんとも良く訳の分からないことを口走ってくれる。
でも、まぁ、馬と話をしている、この状況自体異常なんだし。
ひょっとすると何かヒントが得られるかもしれない。
――しかし、こんなありえない状況、崖から落ちたショックで幻覚でも見ているのだろうか、僕は。
「混乱するのは分かるが、とりあえずこれは夢幻の類ではない。確たる現実だ……が、察しの通り、お前がいた世界ではない。先ほど、お前がいた世界にいるような馬ではない、と言ったがな。私は翼を持った空駆ける馬、この世界で『空馬』と分類される種族で、その中でもこの世界に一頭しかいない神獣のランクにあるものだ。天馬、と言う言葉であらわせばお前には分かりやすかろう」
「…………」
と、とりあえず。
ここがまともな世界――少なくとも、僕のもといた世界から見れば――じゃなくて、目の前にいるのは、普通じゃないなんかとてもスゴイ馬だ、っていうことだよね。
……ていうか、なんか、妙に威厳があるし、この馬さん。
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