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??「あの……キレイですね。」
青年は少女に背を向けそう呟いた。
そして少女は、その言葉が自分に向けられたものだと思い、えっ?と顔を赤らめながら、青年の背に聞き返した。
??「あ……あの、この木ですよ」
青年は少女が勘違いしていることに気がついたのか、少女に向き直り自分の言ったことに補足をした。
??「えっ、ああ……そうだね
セレッソの木って言うんだよ
今の季節はピンクの花をつけるの
あたし、ここが大好きなんだ」
少女も自分の勘違いに気がつき、照れ隠しか微笑みながら木の説明を青年にした。
??「……僕も……好きになれそうな気がします」
??「ホント?
気に入ってもらえて、よかった」
そんなたわいもない話をしていると、どこからか地鳴りのような音が聞こえはじめた。
??「な、なんだ!?」
??「マナ~!!
結婚は絶対に許さんぞぉぉぉぉぉ!!」
青年が驚いて辺りを見渡していると、広場の入り口から青年よりも二回り以上大きい男――筋肉質な体で口には薄い金色の立派な髭を蓄えた中年――が、怒鳴りながら入って来た。
マナ「お父さん!?
何よ、結婚って!?」
少女―マナは、大柄な男に向かって怒った顔で怒鳴り返した。
??「マナ~、お前はお父さんと結婚するって言ってたじゃないかぁ……」
マナ「子供の頃の話でしょ!
大体どうして結婚とかの話になるのよ?」
目尻に涙を浮かべている父親に対し、さらなる剣幕で怒鳴るマナ。
??「だって、お前たち、好きだなんだと……」
対してマナの父親は、最初の勢いはどこに行ったのか、しょんぼりとしながら返事をした。
マナ「花の話よ、もう」
??「なんだ、そうだったのか
ビックリさせないでくれよ」
マナ「ビックリしたのは、こっちよ」
そんな父親の返事を聞き、呆れ果てたマナに対し、マナの父親は安心したのか満面の笑顔になった。
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