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少女は一瞬顔をしかめてすぐに咳払いをした。
「ま、まあ、お嬢様のバルコニーに忍び込んでるんじゃそう言われても仕方ないのよね」
空を見上げる。眩しい初夏の陽射しが少女の白い肌と赤毛を照らす。
少女の顔はパデュマがため息をつくほど愛らしかった。
「こんなに眩しいものだったなんて知らなかったのよね」
「貴女はどなたですの? 私はパデュマと申します」
少女に一歩近づいてパデュマは微笑んだ。少女は一歩下がって微笑み返す。
「私は貧民なのよね。貴女のお父様に文句を言いに来たのよね」
「え?」
お父様に文句。文句、苦情。
「ヒンミン様がお父様に?」
「貧民様? 馬鹿にしてるのよね」
少女は明らかに不機嫌な顔を見せてパデュマをにらむ。パデュマは訳もわからず首を傾げた。
「まさか貧民も知らない……とか? そんなわけないのよね。虐げる相手を知らないなんて、失礼極まりないのよね」
「えっと、ごめんなさい。でも私は知る必要がありますわ。ヒンミンというのを教えていただきたいですわ」
パデュマは少女を招き入れようとした。少女はそっぽを向く。
「知らなければ知らないでいいのよね。私は、貴女のお父様に用があるのよね」
バルコニーに走り去り、少女はそこから飛び降りた。
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