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他の使用人がジョシュアに挨拶をするが、ジョシュアはそれを軽くあしらって少女の前に歩み寄る。
「姫君、少しの無礼をお許しください」
パデュマが返事の言葉を出す前に、ジョシュアは少女を捕まえている相手の腕をひねりあげた。少年の腕力でそう簡単にいくはずがないのかも知れないが、貴族の息子ということで相手も力を加減しているのかも知れない。
「俺を誰だと思ってる。俺はジョシュア・ルノール、ルノール伯爵家の跡取りだ。そしてその娘を誰と思っている」
ジョシュアは少女を見つめて大きく息を吸った。
「その娘は俺の婚約者だ」
「は? ふざけないでよねっ!!」
少女はジョシュアに怒鳴る。パデュマは二人の顔を交互に見た。
「お前がここに来た理由を知っている。お前の大切な想い人がいなくなったのだろ? アバダン公爵の独立のせいで」
「お父様が独立……?」
掴めない。
意味の掴めない説明にパデュマは呆然とジョシュアの言葉を繰り返した。
「諦めろ。強行に向こうが許すはずもなく、こっちが折れるはずもない。もう二度とあいつには会えない。俺もお前も。ずっと一人でいるわけにもいかないだろ? 俺の妻になれば全ての生活を改善してやるぞ。もちろんお前の両親と、残されたその想い人の妹も」
「は? 会えないとか勝手なこと言わないでよね、このへちゃむくれ伯爵息子。貴方みたいな顔面格差のある人、私に釣り合うはずないのよね! 私に釣り合うのはあの麗しい彼だけ!」
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