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立ちすくんでいる少女を引いてパデュマは中庭の方に歩き出した。
少女が太陽を見て幸せそうに目を細めていたのを思い出す。余程お日様が好きなんだろうと考えた。
「中庭に紅茶とお茶菓子をお願い致しますわ」
目についたメイドに頼み、少女にしゃべらせることなく進む。
「私のとても好きなお菓子と紅茶でおもてなしをしますわね」
「え、あの……あ、うん……」
少女の表情は見えない。ただ、嫌がっている声にも聞こえないので、パデュマは嬉しくなった。
「貴女はおいくつですの? 私は十四ですわ」
「私も、同じなのよね。それで……」
話を続けようとしたとき、建物が広く開いている先に明るい庭が見える。
光を浴びた花が綺麗に咲いて、真ん中に水をたたえる泉がある。
その泉に向かうようにテーブルと、横並びの二脚の椅子があった。
「ここは私がお友だちといつかお茶をしたいと考えていた庭ですわ。同じ年のお友だちが特に欲しかったのですわ」
パデュマは嬉しくてたまらない。貧民というのはわからないけれど、繋いだ手の先に愛らしい少女がいる。それは自分の友だちで。
「フィリップ様と婚約をしたり、お友だちができたり、薔薇王子様に出会ったり、なんて素敵な日でしょう」
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