12人が本棚に入れています
本棚に追加
パデュマは少女を椅子に座らせ、自分も座る。すぐに目の前に紅茶とクッキーが置かれた。
「お召し上がり下さいませ」
「い、いただくのよね」
少女は体を強張らせたまま目の前の皿からクッキーを掴んで口に入れた。
「甘い……」
ため息のように言葉を放つ
「ミクが作ってくれたみたい」
ぽそりと呟いて空を見上げた。
「貴女はお日様が好きですわね。私もこの屋敷で見かける、きらきら光を浴びる朝露や、夕暮れに長く延びる影が大好きですわ」
「……私は初めてお日様を見たのよね、うん、多分初めて」
パデュマは少女の言葉に、彼女の表情を伺った。目を閉じて緩く微笑んでいる。
「暗い洞窟に住んでいるのかしら……」
本で読んだのは、光の届かない暗い洞窟。目が爛々と輝く魔物の住む世界。
「ふふ、本当に知らないのよね。貴女の大好きなこの光を浴びた屋敷が私たちの世界からお日様を奪ってるって知ったらどう思う?」
「え? お日様は平等ですわ。私の屋敷が奪うとかありませんもの。誰の上にもありますわ」
少女はクッキーをまた一枚頬張り、紅茶で軽く流し込んだ。
優しく微笑むとすっと立ち上がる。
「貴女はそのままでいいのよね。そのままそこで笑っていて」
最初のコメントを投稿しよう!