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屋敷の中を探したが、少女は見つからなかった。パデュマは残念な気持ちを引きずって部屋に戻る。
「すぐじゃなくても良いですわ。だって探せば会えますもの」
酷く愛らしい顔だったことを思い出す。どこにいても見たことがないくらいで、天使みたいにも見えた。
「可愛いメイドさん……お友だちになっていただいて、毎日一緒にお茶会しますの。そしてフィリップ様とお散歩して、薔薇王子様にも会いにいって……」
何て幸せなんでしょうか。
パデュマは部屋にいるメイドに入浴後のドレスを選んでもらい、部屋の隣の入浴場に向かう。
服を脱がせてもらって薔薇の花びらが浮かぶ湯船に浸かった。
「どうしましょう」
声が漏れる。
嬉しさがこみ上げる。
昨日の嵐の恐怖がこの幸福を連れてきたのなら、嵐が大好きになってしまいそうだった。
「姫様、そろそろお時間です」
そんなに入浴は出来てないが、かけられた声に手を伸ばす。
湯船からメイドの手に引き上げてもらい、身体を拭いてもらった。
「私に専属のメイドさんができますのよ」
パデュマは独り言のように呟き、背中を拭くメイドは優しく返事をした。
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