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「いつお会いするのかしら。粗相がないように……」
そわそわとバデュマは朝食テーブルから遠く見える鏡の自分を気にする。
伸ばし始めた黒髪は肩まであり、寝癖なのか少し跳ねている。パデュマはそれを撫で付けた。
「姫様……」
メイドの声もパデュマには届かない。食事を終えてパデュマは父親の部屋に向かった。
「っと……」
父親の部屋から出る背の高い男性とぶつかりそうになる。パデュマは慌てて後ろに下がった。
「ああ、失礼。くっそ、まずいぞ。行方不明になっちまった」
男性はパデュマに視線を合わせることなく頭を掻きながらぼやいていた。
「どうなさったのですか? 私もお探しするのをお手伝いいたしますわ」
妃になる。それは民に尽くすこと。パデュマはそう気持ちを固めていた。
「あ? いや、手伝えない。王子が行方不明になった。俺が抱えてくるつもりだったのに」
「王子が行方不明に……」
パデュマは繰り返して頭の中で意味を考える。
王子が、行方不明。
王子、フィリップ。
「フィリップ様が! 昨日お見かけしましたのよ?」
「いや、さっきまでちゃんといたはずなんだ。どこに行きやがった」
ぼやいている。
「レシフェ、早く探してくるんだ。私はそれは望んでいない」
部屋から父親も出てくる。パデュマは理解が追い付かなくて混乱していた。
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