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「あ、やっと見付けた!!」
しばらく歩いていると、後ろから声がした。
振り返ってみると、そこには1人の女の子がいた。
セーラー服を着た、長い黒髪の女の子。
その女の子を見た瞬間、
「――――っ!!」
頭に激しい頭痛が走った。
思い出そうとした時よりも強烈な、とても激しい頭痛。
僕は思わず膝を付いてしまった。
「大丈夫、ケン君!?」
女の子が僕に駆け寄る。
ケン君?
もしかして、それが僕の名前なんだろうか?
「ねぇ、大丈夫!? 頭が痛いの!?」
駆け寄ってきた女の子は、僕に心配そうに声を掛ける。
何だろう、この声が、動作が、とても懐かしい。
「ケン君、大丈夫!?」
「大丈夫……だけど、そのケン君って僕のことなの? 君は誰? 此処は何処なの?」
僕は思いつく全ての疑問を女の子に言った。
女の子は一度キョトンとすると、
「――――本当に、覚えてないんだ」
と、目を丸くしながら言った。
どういうこと?
この口ぶりからして、この女の子は何かを知っている?
「知ってたら教えて欲しいんだ」
僕はよろりと立ち上がりながら、女の子に言った。
すると女の子は、ニコリと満面の笑みを浮かべ、
「私はユリであなたはケン君。此処はね、私達だけの楽園なんだよ」
私のことはユリちゃんって呼んでね。
そう女の子、ユリちゃんは言った。
瞬間、
『その女は嘘をついている』
頭の中に、誰かの声が響いた。
男の人の声だ。
周りを見渡してみるけど、僕とユリちゃん以外には誰もいない。
ユリちゃんを見てみるけど、何事も無かったような表情をしている。
気のせいだったんだろうか?
「さ、行こうケン君」
突然ユリちゃんが僕の腕を掴み、走り出した。
「え、何? 何処に行くの?」
僕がそう聞くと、
「決まってるじゃない!! 私達だけのユートピア(理想郷)よ!!」
僕は走り出す。
何も分からない世界で、自分が何者なのか分からないまま。
ただもう一度だけ、頭の中に声が響いた。
『その女と一緒にいちゃいけない。お前はきっと後悔するぞ――――』
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