序章

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木々や窓に吹き付ける強風と雨音で目が覚めた。季節外れの台風が近づいている。 目が見えない俺にとってこういう日は特別だった。 生きていると実感することができるから。 事故からもう4年が経ち、ようやく暗闇の中での生活にも慣れてきた。 4年間で生きるために敏感になった俺の聴覚は、生活を豊かにするのと引き換えに、聞きたくもない音までひろってくる。 そんな音を打ち消してくれる今日のような日が俺は好きだった。 目が覚めても毎日の生活は音しかない暗闇の中。俺にとっては夢で見る光景のほうがよりリアルに感じてしまう。
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