少しややこしくなりながら、

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「そういえばさ、もうすぐバレンタインデーじゃんよー」 同じく朝の教室。場所は変わって、東中。冬場にも係わらず見た目寒そうな短髪の少女――笹川小夏が思い出したかのように呟く。 「珍しいね。こなちゃんがそんな乙女な行事の存在を知ってるだなんて」 「私にとって、バレンタインデーはチョコあげるんじゃなくて貰う日だからよ。ちゃっかりしっかり覚えてる」 楽しそうに舌なめずりする小夏に呆れた眼差しを向ける、肩まで程の長さの黒髪少女――松岡美冬は、ふと考えるように顎に手を当てた。 「どした?」 「いや、食べ物で釣れば、こなちゃんオチるかなって」 「オチないし、本人の前でする話でもねぇな」 「相変わらず百合百合してますねぇ」 そんな2人に、隣の席に座っている少女が声を掛ける。中学生らしからぬ発育のいいスタイルにもかかわらず、ふわっとした長い黒髪と童顔がそれを見事に打ち消していた。 幽霊属性も消え、最早読者サービス要員となった少女――高山みちるである。 「な、何だか物凄く失礼な事を言われた気がしますぅ!」 気のせいです。 「て言うか、百合百合はしてねぇよ。まっつんの一方通行だよ。アクセロリータだよ」 「ロリータ言うなですぅ」 「禁書ってよく考えたらロリコンだらけよね……」 そんな会話が続く中、無言で机に突っ伏している少女がいた。 浅月理緒。栗毛のポニーテールが良く似合っている、望の妹である。相変わらず朝は駄目なようで、ポニーテールがやる気無くうねうね動いて……いやいやいや。人外かこいつ。
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