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「彼女が、欲しい」
「………………」
朝のHRが始まる前の静かな時間。まだ教室には生徒は揃いきっておらず、何人かは自販機にジュースを買いに行ったり、他のクラスに遊びに行ったりしていた。
たった今、ずり落ちそうになったメガネの位置を直した黒い短髪の男――浅月望もその中の1人であった。
今目の前で大真面目な顔してふざけた事をほざいた小柄な金髪碧眼の男――橘春が「聞いてくれよ望っち!」なんて言って来なければ、コーヒーでも買いに行こうと思っていたところだ。
「もう一度言おう。彼女がほs」
「言わんでいい!!」
「いいや言わせてくれ! 俺だって人肌恋しくなる時があるんだよ! 望っちみたいに彼女とイチャイチャしたりうっふんあっはんしたい時があるんだよ!」
「してねぇよ!」
「望っち大先生は、姫っちともう色々済ませたんですよね? どうだったんですか?! やはりSha ra raエクスタシーって感じでしたか?!」
「知るか! 言っとくが、べ、別に俺だってまだ……」
「え? 何、望っち童貞? んだよぉ、早く言えよブラザー」
「急に馴れ馴れしくなるなよ! ていうか、初っぱなからこんな会話かよ最悪だな!」
そっかそっかと小躍りを始めた春を、血管を浮かび上がらせながら望は内心舌打ちをした。くそ、自分でいじられるような情報を与えちまった。
ちなみに姫っちと言うのは、望達と同じ学年の、セミロングの栗色の髪に、モデル並みの可愛さで男女問わず憧れの的になっていて――望の彼女でもある女子、姫神愛香の事である。
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