1012人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、ともかくだ。もうすぐモテない野郎共の聖戦、ヴァレンタインデーじゃん? 貰えるかどうかドキドキしながら待つのもいいんだけどよぉ、やっぱり俺としては? その前に彼女作って、安心してチョコを貰ってイチャイチャ性戦にしたいんだよなぁ」
「最低な願望だな。まぁ確かに、当日貰える確率0のお前なら、先に希望は欲しいところだよな」
「確率0なの?! 姫っちは?! 去年義理チョコくれたじゃん! チロルだったけど!」
「『春は……もうあげなくていいわよね。橘だし☆』だとよ」
「わーい。相変わらずそっくりな声マネだ姫っちぃいいいいいいい!!」
「だから橘って何だよぉおおお!」と叫びながら床を転げ回る春を望は見下ろす。
哀れ。非常に哀れである。そんなにこだわる意味がわからないのは、自分がこういう行事に興味がないからなのか。それても自分は大丈夫だという余裕があるからなのか。
ともあれ、今目の前で無様に転がるヴァカに聞きたいことがあった。
「じゃあお前、彼女が出来れば誰でもいいのか?」
「へ? あ、いや、別に誰でもって訳でも無きにしも非ずって感じで」
「やっぱみちる目当てか」
「ぶぅぅううううううっっ!! なななな何言ってんだメガネこの野郎! べ、別にそんなんじゃないんだからねっ!!」
うぜぇ。心底うぜぇ。今すぐ窓から落としてやりたい衝動を望はぐっと押さえ込む。
ぶっちゃけもうわかりきってはいるのだ。橘春はおそらく、ていうか確実に、浅月家の準居候――高山みちるのことが好きなのだ。
ていうか、バレない方がおかしい。もはや春にとって、浅月家に訪れる理由が勉強よりみちるに会う事がメインになっているのである。
……いや、ダメだろそれ。
最初のコメントを投稿しよう!