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「今は勉強なんかどうでも良いんだよ! 未来への憂いより今現時点の喜びが最優先事項だ! 俺が何を大切にするかは常に・俺が・自分で決める!!」
「ダメ人間だな」
「ハッハァ! 何とでも言いな! どうせ今年はダメだったんだ! これは来年までの充電期間に入る前の小休止なんだぜぇ!!」
机に片足を上げ、ギターを弾く真似をするアホを、望は呆れ顔で見やる。
春の頑張りっぷりには望も目を見張るものがあったが、如何せん火が点いた時期が遅すぎた。確かに点数は伸びたものの、それでも元が低かった為に、残念な結果となってしまった。浪人確定である。人生そんなに甘くはなかった。
笑ってはいるが、内心どんな気持ちなんだろうな。望は騒ぐ春を窓から投げ捨てながら考える。
言葉に出して言いたくはないのだが、やれば出来るのだ。実際、遊び抜きで勉強したらわかりやすく点数は伸びた。この調子でいけば、来年合格するのも夢ではないだろう。
しかし、そのやる気を継続するのは本当に難しい。こいつ、ちゃんとやれんのかと母親の如く心配する望なのであった。
ちなみにこの1年後。春は望の心配など杞憂だと言わんばかりに、見事獣医大に合格する事になるのだが……まぁ、それはまた別の話である。
「ねぇねぇねぇ!! すっげぇ当たり前みたいに窓から捨てたけど、ここ3階なんだけどそこんトコわかっイヤァァァアアアアア!! 地面が近付いてきてホラもうぶつかあべしッッ!!」
ギャグでは済まないような鈍い音が響き教室は一瞬静まり返ったが、「なんだ橘か」といつもの光景に戻る。3年もすればさすがに慣れる。
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