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「うぅ……くそ、今回もこんな扱いだなんて……」
拾ってきた木の棒を杖にしながら春が教室に帰還する。体はボロボロだが、その目には復讐の炎がチロチロと燃えている。
「望っちぃ! 俺を怒らせたらどうなるか……わかってるんだろうなぁ?!」
「泣き寝入りだろ?」
「いや、その基本的にはそうなんだけど……じゃなくて!」
基本は泣き寝入りなのかよっ、と全クラスメートが心の中で総ツッコミ。この時点で、最早春に勝ち目は無いと全員が確信する。が、
「皆の衆! こいつを……姫っちを奪って調子に乗ってるメガネをこのままのさばらせておいていいのか?!」
「あ、テメ、味方増やす気か!」
クラスの男子がどよめく。確かに不満――いや、殺意はあった。あれ? もしかして、一斉に掛かればこのメガネを殺れるんじゃないのか? しかし、やれるのか? いや、やれる。俺なら――いや、俺達ならッ!!
1人、2人と席を立ち、望を見据える。流石にマズいと感じたのか、望がたじろぐ。
「わぁー。望、大ピンチだね」
「他人事みたいに言いやがって……。テメェらも! そのバカに簡単に乗せられてんじゃねぇよ!」
望の声に、男子達が誰ともなく嘲笑する。
「乗せられる? このバカ――いや、橘に? 何を言ってるやら。これは俺達の、非リア充の意志だ!」
「そこの橘など、単なるキッカケに過ぎぬわ!」
「そうだそうだ!」と、教室の隅でさめざめと泣きじゃくる春などお構いなしに次々と声が上がる。
「だいたいさっきの会話聞いてりゃ何だ! 童貞ぶってもリア充には変わりないだろうが!」
「どうせ隙ありゃイチャイチャしてんだろが! べろちゅーしてんだろが!」
男子の1人が泣きながら声を張り上げる。ここで照れたりニヤついたりしたら即殺しようと皆が睨む。が、
「「………………」」
望と愛香は気まずそうに皆から目を逸らした。
あれ? もしかして……。まっさかぁ、もうかなり経つぜ? そんな会話が飛び交う。
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