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「えっと…………浅月? 怒らない、絶対に怒らないからさ、おいちゃんに話してみ? キスくらいはもうしたんだよな? ……な?」
さっきまで殺気立っていた男子の中の1人が、優しい声色で語り掛ける。
対する望は、決して目線を合わせようとしないうえに、さっきから脂汗がもの凄い量で流れ出ていた。
ちなみに愛香は人知れず逃亡を済ませていた。
「おいおい……冗談だろ? だって、告白した時だってキスしそうな雰囲気だったじゃねぇか」
「浅月がヘタレなのか? 姫神さんがヘタレなのか?」
「浅月だろ。メガネだし」
「俺、懺悔するよ。ぶっちゃけ、付き合ったって聞いた時から、姫神さんの乱れた姿を妄想してた……」
「お前は俺か」
「何だ鏡か」
「おいおい、三面鏡かよ」
「誰だ、教室を万華鏡に変えた奴は」
「どうやら俺はミラーラビリンスに迷い込んじまったみたいだぜ」
「テメェら……」
望がプルプルと震えながら拳を握り締めると、
「「「で、結局どうなんだ」」」
と、再び教室内の男女全ての視線が望に注がれた。
望は、「あ~」だの「う~」だの言って視線を泳がせたのち、
「さらばだッ!!」
「野郎、逃げる気か?!」
「囲め囲めぇ!!」
一瞬で出口が2つ共封鎖される。が、望は迷わず窓へ向かった。無警戒なそこからなら逃げられる。3階だが、死ぬことはないだろうと確信していた。
だってほら、ギャグシーンだし。
「『あばよ、とっつぁ――――っ?!』」
足に、違和感。
気付けば望の足にワイヤーがしっかりと絡まっていた。それを見た竜斗が、ポンと手を叩く。
「そう言えばそこには……例の生徒会室篭城事件の時仕掛けたトラップが残ってましたね」
「テメッ、詳細話す気もねぇクセに――ちょ、まっ、受け身がとれな――」
絶叫が街に轟く。
今日もこの学校は平和です。
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