1.生徒指導室の憂鬱

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「うるさい猿のせいで、色々ごちゃごちゃしてしまったが……」 組み合わせていた手をほどき、頭を掻きながら町田刑事を睨み、続ける。 「先程も言ったように、俺達は事件の全容を把握する為に、話を聞かせて欲しいだけだ。 勝手に容疑者として、話を進めてしまった事は、本当にすまないと思っている。 ただ……君がしてくれた証言の中には、まだ俺達にとって解釈しにくい物があるのも、また事実なんだ」 ………なんだ。と、感じた。 「…俺は全部話したつもりです」 結局、この人も遠回しに俺を疑っているんじゃないか。 被害者の伊沢先輩の証言と、俺の…雨宮明幸の証言との食い違い。 決定的な“差違”。 「それは分かっている」 速水刑事はうなずく。しかし、どうだろう。 さっきまで俺が町田刑事に疑いをかけられていた時、この刑事はしばらくそれを観察していた。 それは、俺の“反応”を見ていたのではないか。 “犯人”扱いされた時の、俺の行動。表情。発言。全てを観察し、“穴”を見付だそうとしたのではないだろうか。 町田刑事を『餌』として、食い付いた『魚』を速水刑事が釣り上げる。 なんだ。見事なコンビネーションじゃないか。
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