311人が本棚に入れています
本棚に追加
「うるさい猿のせいで、色々ごちゃごちゃしてしまったが……」
組み合わせていた手をほどき、頭を掻きながら町田刑事を睨み、続ける。
「先程も言ったように、俺達は事件の全容を把握する為に、話を聞かせて欲しいだけだ。
勝手に容疑者として、話を進めてしまった事は、本当にすまないと思っている。
ただ……君がしてくれた証言の中には、まだ俺達にとって解釈しにくい物があるのも、また事実なんだ」
………なんだ。と、感じた。
「…俺は全部話したつもりです」
結局、この人も遠回しに俺を疑っているんじゃないか。
被害者の伊沢先輩の証言と、俺の…雨宮明幸の証言との食い違い。
決定的な“差違”。
「それは分かっている」
速水刑事はうなずく。しかし、どうだろう。
さっきまで俺が町田刑事に疑いをかけられていた時、この刑事はしばらくそれを観察していた。
それは、俺の“反応”を見ていたのではないか。
“犯人”扱いされた時の、俺の行動。表情。発言。全てを観察し、“穴”を見付だそうとしたのではないだろうか。
町田刑事を『餌』として、食い付いた『魚』を速水刑事が釣り上げる。
なんだ。見事なコンビネーションじゃないか。
最初のコメントを投稿しよう!