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違うか?
さっき、町田刑事を叱咤したのも、台本通りなんだろう?
俺は速水刑事を見る。勿論、答えは何も帰っては来ない。
まさに疑心暗鬼。なんだかなぁ。
ここ数日、本当にろくなことが無い。
沈黙がしばらく続いた。
野球部の掛け声は、バットが鳴らす金属音へと変わっている。
太陽も山際へと消え入りかけて、生徒指導室には灯りがついた。
「……このままにらめっこ続けても、らちが空かんな」
沈黙を破ったのは、速水刑事だ。
首を左右にゴキゴキ鳴らし、座り疲れをアピールしながら、言う。
「じゃあ、後一度だけ、事件の状況のまとめを俺が説明する。
始めてからもう、結構な時間が経つしな。おさらいってやつだ」
右指を一本立てる。ラスト。これがラスト。
「ただ、雨宮君の事件発生時前後の様子も、もう一度だけ説明して欲しい
同じことを反復していけば、また何か思い出すかもしれないしな」
『刑事は何度も同じことを聞きたがる』という。
状況を何度も説明させる事で、証言の矛盾を突くためだとか。
……なるほどな。素直に感心する。
話しの持って行き方が上手い。今の俺の中は『早く解放されたい!』という欲求で一杯だ。
俺は黙って頷く。
ラスト!これで本当にラスト!!
時刻は6時10分前。
ゴール目前のランナーのように、気力を振り絞る。
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