1.生徒指導室の憂鬱

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ふぅーと、速水刑事は大きく息を吐く。 「タバコ吸いてぇが、流石にマズイよな……。」 いくら仕事慣れしているといっても、流石に刑事達も疲れているのだろう。 天井を見上げ、ポツリと呟く狼。 そして、意を決めたように再度、もう一度俺に向き直り…… 「事件が起こったのは、今日の午後13時56分。 この学園の3年4組の教室の外に、女生徒が落下してきたことから始まる」 事件のあらましについて、語り始めた。 「落下した女生徒は、幸運にも陸上部の使用していた、『高跳び用のマット』に落ちたことで、命に別状は無かった。 ……まぁ、もっとも、右足首を落下時に骨折しているから、必ずしも無事だったって訳じゃ無いがね」 そして、学園が呼んだ救急車で、市の大学病院まで運ばれた………。 耳に残る、サイレンの音。 慌てふためく教職員達と、興味津々で群がる生徒達。 そして運ばれて行く、『学園の天使』・伊沢 雪先輩の姿を、俺は屋上からポカンと見つめていた。 「落下地点にはマットの他にも、様々な陸上器具が置いてありました。 学園側からの証言によれば…… 『これ等の道具は、陸上部が朝練の際に使用している物で、放課後まで一時的に、3年4組の教室の前に配置していた』 ……とのことです」
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