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そんな『人間の鏡』の様な生徒と、ごくごく平凡な生徒の俺と。
どちらの証言を信じるかなんて、百人中百人が前者を選ぶだろう。
その上、俺の証言は、自身の保証すら危ういものなのだから。
「と、ここまでが大筋の流れになる訳だが……。」
何か質問は?と、聞かれ、俺はふと疑問に思った事を述べた。
「そもそも、なんで伊沢先輩は屋上にいたんですか?」
そうだ。考えてみれば、なんでこんな根本的な質問をしなかったのか。
……自分が犯人ではないかと疑われたのが、思った以上に堪えていたのだろうか。
「良い質問だ」
速水刑事がニヤリと笑う。
「但し、説明は2回目だがね」と付け加えて。
最初の説明で俺が“心ここに在らず”ということを、どうやら見抜いていたらしい。
ハァ…。不甲斐ないにも程がある。
「さてその理由についてだが、俺達はまだ被害者の生徒に会っていないので詳しくは分からん。
ただ、関係者からこれまで聞いた話からするとだ。
どうやら被害者は事件が起きた休み時間に、後輩の生徒と屋上で会う約束をしていたらしい。」
「後輩の生徒……ですか……?」
「テメェも知ってるだろ。テメェの後に屋上に行ったっていう、やたら騒がしいのと、小動物みたいな娘だよ」
そう答えたのは、町田刑事。
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