1.生徒指導室の憂鬱

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その視線に町田刑事は頷き、“休め”のポーズを解くと、胸ポケットからペンと手帳を取り出す。 THE・アイコンタクト。 見た目もそうだがこの二人、どこまでもドラマ仕立てだ。 「それじゃ、そろそろ良いか?」 速水刑事が、今一度両手をテーブルの上で組み、半眼を覗かせる。 「今日の昼過ぎ、君は何故、屋上にいたのか。そして、そこで何をしていたのか」 冷たい威圧。 全く。急かさないで欲しいんだけど。 俺は余裕のある振りをして、窓の外を眺める。 夕暮れの山際が赤く、美しく、開けっぱなしの窓から吹く、夜風が肌に心地いい。 7月8日、木曜日。 今でこそ若干過ごしやすいが、今日は洒落にならない位に暑い日だった。 俺は授業をサボり、どうしてあんなにも暑い屋上に上ったんだったか………。 俺のやる事だし、きっと大した話でも無い。 それでも良いなら、語ろうじゃないか。
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