2.屋上の冤罪

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午後12時50分を過ぎた頃だったろうか…。 正確な時間は不明だが、昼休みの終了を知らせる、4時限目の与鈴が鳴ったことだけは確か。 舞台はそんな午後のこと。 私立・和仁(わじん)学園高等学校、2年1組に所属している俺、 雨宮 明幸(あまみや あきゆき) は現在、周囲に気を配りながら2階から3階へと続く階段を上っている。 そろりそろりと、身を屈めながら。 その姿はスパイ映画の主人公だが、舞台が学校というのが今ひとつ。 盗み出す重要機密が無いのもいただけない。ボンドへの道は遥かに険しい。(目指しちゃいないが…) 曲がり角では壁に背をつけ、首だけを覗かせて周囲を確認。 オーケィ。3階も人影無し。 流石は第1棟の進学クラス。3階に在学する1年生といえども、与鈴に忠実だ。 和仁学園は、進学を希望する生徒を1~4組に分けた『第1棟』と、就職目指す生徒を、5~10組まで集めた『第2棟』に区分されている。 “区分”、と書くとなんだか差別的意味合いに取られそうだが… 『より良い環境で若い力の飛翔を助ける』 というのが、和仁学園の方針。 進学組には当然、受験対策や、特別講師を招いての“学習会”。 就職組への資格講習や短期インターンシップ等々。 進学、就職それぞれ『エキスパート』を育てるためのカリキュラムを実施しているため、受験倍率がやたらに高い。 学園都市として名高いH市を象徴する学校。 いやはや、田舎には勿体無い。
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