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そんな俺の悲痛な訴えが、生徒指導室中に響いた。
7月8日の木曜日。
時計の針は夕方の5時をとっくに廻ったが、まだまだ沈む気配は見せない。
グラウンドからは、野球部の掛け声が聞こえる。
声に若干の頼り無さを感じるのは、恐らく2年生に部が引き継がれたからだろう。
普段なら、この掛け声に合わせて鼻歌の一つでも鳴らすところだが、今の俺はそんな余裕は無い。
正直、今なんで自分がこんな目にあっているのかさえ、良く分からないのだ。
「あぁん!?」と、俺の訴えに刑事の一人が反応する。
生徒指導室にいる二人の刑事。
俺と机を挟んで座っている中年の刑事と、うろうろ(またはイライラと)教室を廻っている刑事。
反応したのは室内を歩き廻っていた方だ。カツカツと靴を鳴らして左横に立つ。
「あのなぁ。そうやって叫んで、俺達が『ハイソウデスカ』って引き下がると思ってんか?警察嘗めてんか!?」
腰を屈めて目線を合わせ、カッと目を見開く。
THE・メンチ切り!
成人男性にしたら、小さな体躯。そして短く刈り上げた髪から、まるでキレたマントヒヒを連想させるが、短所を補うその勢いで迫力十分だ。
「さぁ吐け!なんの恨みがあって被害者を突き落としたりしたァ!!」
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