1.生徒指導室の憂鬱

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「だからぁ!」 しかし、いくら相手がヤンキー紛いの刑事でも、食ってかからなければいけない時がある。 「俺は伊沢先輩と面識全然無いんですよ?突き落とす動機だって!」 全部、あんた達警察の言い掛かりじゃないかと、数年振りに大声を出す。 ほとばしる、思春期のエネルギー。 ただ、目の前にいる猿顔の刑事にとって、叫んだり叫ばれたりは、常日頃から行われる些細な事らしい。 動揺した素振り一つ見せず、フンッと鼻先で笑う。 「テメエ自身の欲望の為とか、あるじゃねぇか。去年のミスコンなんだって?ミスコンに言い寄って、テメエの物にならないから、突き落とした…」 「…なんだよ…それ」 暴論にも程がある。 頭の芯が熱い。 このままこの猿の顔に左フックを喰らわせたい衝動に駆られる。 そう。ここで鬱憤を晴らそうとするのは簡単だ。 簡単だからこそ、冷静になれ。怒りを押さえろ。刑事に殴りかかるのは、あまりにもリスキー。それに… 暴力って先に手を出した方が負けだろう?そうだろう? 爪が食い込む程に拳を握りしめ、必死に自分へと言い聞かせる。 猿と俺との睨み合い。均衡を破ったのは双方どちらでも無かった。
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