311人が本棚に入れています
本棚に追加
「だからぁ!」
しかし、いくら相手がヤンキー紛いの刑事でも、食ってかからなければいけない時がある。
「俺は伊沢先輩と面識全然無いんですよ?突き落とす動機だって!」
全部、あんた達警察の言い掛かりじゃないかと、数年振りに大声を出す。
ほとばしる、思春期のエネルギー。
ただ、目の前にいる猿顔の刑事にとって、叫んだり叫ばれたりは、常日頃から行われる些細な事らしい。
動揺した素振り一つ見せず、フンッと鼻先で笑う。
「テメエ自身の欲望の為とか、あるじゃねぇか。去年のミスコンなんだって?ミスコンに言い寄って、テメエの物にならないから、突き落とした…」
「…なんだよ…それ」
暴論にも程がある。
頭の芯が熱い。
このままこの猿の顔に左フックを喰らわせたい衝動に駆られる。
そう。ここで鬱憤を晴らそうとするのは簡単だ。
簡単だからこそ、冷静になれ。怒りを押さえろ。刑事に殴りかかるのは、あまりにもリスキー。それに…
暴力って先に手を出した方が負けだろう?そうだろう?
爪が食い込む程に拳を握りしめ、必死に自分へと言い聞かせる。
猿と俺との睨み合い。均衡を破ったのは双方どちらでも無かった。
最初のコメントを投稿しよう!