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「町田ァ。いい加減、うるせぇ」
俺の正面に座ったまま、事の成り行きを見つめていたもう一人の刑事。確か名前は…
「は、速水さん……でも、こいつ……」
そう、速水と言った。
年齢は大体30代後半といったところか。顔の彫りが深く、目付きが異様に鋭い。
ただ、がなり声を上げて一方的に怒鳴り散らす、隣に立っているヤンキー紛いと違い、この刑事には、知的な雰囲気が漂っている。
例えるなら、群れをたった一匹で統率する“狼”のヘッド。
誰にも媚びず、なびかず。だが、守るべき者は全力で守る。
そんな意志を感じさせる。
「『でも』、じゃねぇぞ」
狼が猿を睨みつける。
両手を机の上で組むと顔の下半分が隠れ、目だけが、俺達を睨む恰好になる。
「あのなぁ、俺達は生徒さんを尋問してんじゃねぇんだ。
事件の全体を把握する為に、話を聞かせてもらってんだ。
ソコんとこ、分かるか?」
「はっ、はい!」
ビビっている。
今の今まで、俺と睨み合っていた猿顔刑事(名前は町田。忘れてた。意図的に)が、首を竦めてしまう程に。
だが、気持ちは良く分かる。
現在、俺達はほぼ同じ位置、つまりは“速水刑事の視線上”に居るわけで。
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