《一章-青空の下、慟哭-》

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 制止するミサトを無視する様に、上空でホバリングしていた航空機は高度を下げる。それを見て、ミサトは携帯電話のマイクへ一層騒ぎ立てた。 「あぁぁ!待てって言ってんでしょうが!」  その悲鳴にも似た叫びに反応した様に、ある程度まで高度を下げたところで再び停止する航空機。ミサトが安堵めいた表情を浮かべたのも束の間、航空機はあろうことか変形を開始した。  腹に抱える様に装着された、おおよそ普通ビル程もある格納庫を空中で器用に立て、着地脚を作るとそのまま静かに降り始める。  ミサト渾身の制止を振り切り、格納庫を立てた事で空いた隙間から日光を射し込みながら、それはゆっくりと地に脚を着けた。 「な、何よこれぇ!」  グラウンドに突如そびえた黒いビルを見上げながら、他の二人を後方に従えたアスカがすっとんきょうな声を上げる。    遅い到着だと言わんばかりに三人へ怪訝な視線を送るミサト。それに苦笑で答えたのはシンジだけだった。 「いやいや、すいませんすいません。地上の皆さんへの影響を出さずに高度を維持するのは中々大変でしてー。ま、やむを得ない状況って事で一つ」
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