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黒いビルに内蔵された外部マイクから割れんばかりの音量で、先程まで電話の向こうから聞こえていた声が鳴り響く。
「っ…と、とにかく。許可も無しに着陸すると色々面倒なんです!」
それに電話で返答するミサト。暫しの静寂の後、黒いビルの一角が、ぷしゅんと音を立てて開いた。それに驚いた様に後退るのは、興味本意で近距離からまじまじと眺めていたアスカ。
「やあやあ、すいません。はい、これ許可書。問題ないでしょ?」
そこから現れたのは、『特例着陸許可書』と書かれた紙を掲げた、印象的な円眼鏡を光らせる中肉中背の編鉄もない男。口元に浮かぶ卑屈めいた笑みが、綺麗に七三に分けられた髪型の真面目な印象を崩す。
呆気に取られる取り巻きを尻目に、男は――それから、と続けた。
「私は穂波タケオと申します、ネルフ月面支部長を務めてますがー、えー。ま、よろしく。詳しい事は本部行ってからで良いかな」
なら最初から本部に着陸しろ、と握りこぶしを作るミサトを横目で見て、リツコは煙草の煙を静かに吹き出した。
◇◇◇
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