プロローグ

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 上昇し切った『type-C.G.』の下を重たい音を奏でながらハッチが閉まっていく。  直ぐ様、室内に充填された空気を抜く作業が始まった。と、いうのも、目の前に聳える大きなドアとも言うべきゲートが開けばそこは月面、低重力且つ真空の世界だ。  大和はゆっくりと操縦幹を握った。『type-C.G.』はそれに応える様にシンクロ率を上昇させる。  操縦しているのでは無く、エヴァに成る。人では無く、エヴァに成り切る。自分の脳から発せられた信号は、自分の指では無く、エヴァを動かすのだ。  無音のまま、ゲートが開き始める。聞いた事は無いが、空気があれば重い音がするのだろう。 「あー、『type-C.G.』聞こえるか、こちら指令室。シンクロ率は百二十パーセントで安定、正常だ。モニターは映っているか?目標の場所は随時更新していく、追従して殲滅しろ」 「了解」  ゲートが開ききると、青い大きな星が姿を表した。――今日はついてる。  久々に地球を見た。  だがピピピという不快な機械音にそんな些細な感動を邪魔されてしまう。モニターを見ると『パージ』の文字。  肩部や腕部、頭部にまでまとわりついた拘束具が解除されて行く。  『type-C.G.』は月面へと解き放たれた。
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