プロローグ

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 直ぐ様、目標へと向かって移動を開始する。脚を着く度に月面の砂が文字通り宙に舞った。  無音の世界に、生命維持装置が作動した証拠のモーター音が響く。 「M区間を通れ。武器を射出する」  その指令に、大和は無言のまま従う。  この月面基地は、A区間からU区間まで区切られており、その区間の何処へでもエヴァを射出可能なのだ。  ちなみにV区間からZ区間は建造予定とか。  射出されたのは槍だった。編鉄もない棒の先端に、恐らくプログレッシブナイフと同様の振動機構が搭載された刃。  それを利き手である左手で握ると、脇に構える。というのも、モニターによると、『type-C.B.』はちょうどこのM区間を通るのだ。 「ここで迎撃するが、異論は?」  モニター上に映し出された目標の方向を見据えたまま、大和は小さく呟く。 「無い、ベストだ。あ、それと、基地への被害を最小限にしてくれよ、後々面倒だから」  この男の話し方が、大和は嫌いだった。何とも余裕めいていて、まるで他人事の様に話す。  別に仲間意識がどうのとか、そういう事では無く、大和が任務を遂行するのを信じているなんて事でも無く、最悪の自体が起こってもその対処は考えてあるかの様な余裕。――だったら初めから俺なんて使わなければ良いのに。
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