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力任せに押してくる相手の腹を蹴押してやる。打撃では無く、飽くまでゆっくりと押してやるのだ。
するとふわりと『type-C.B.』の身体が宙に浮く。半重力の月面では直ぐに着地出来る訳でも無く、まるで無防備になる。
それを今までのゆっくりとした所作とは、まるで違う速さで叩き落とす。月面から砂埃の霧が辺りにかかる。それだけの衝撃の筈だが真空の為、無音なのが更に不気味めいて大和の視覚に広がった。
相手の様子も確認せずに、直ちに仕止めに入る大和。足で踏みつけ、位置の確認と束縛を同時に行うと、槍で躊躇なく地面を突き刺す。――手応えはあった。
月面の岩肌とは違う、何かを穿ち貫く感触。直ぐ様、二撃目に移ろうと槍を引き抜くと、未だ舞い続ける砂埃から、鮮血が噴き出す。攻撃は命中していたようだ。
もう一度砂埃の奥を穿つ。そして抜く。そんな作業を六回も繰り返したら、相手の生命反応は消えていた。噴き出す血液が、『type-C.G.』を真っ赤に濡らす。
「…任務完了、と言ったところか」
大和はそう呟くと、砂埃も治まり、無惨な姿を晒す『type-C.B.』を最後の一突きで月面に深く穿ち付ける。
その姿はまるで――。
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