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予感がした
別れの予感だ
生まれたときから常にそばにあってけれど決して一つにはなれぬもう一人との別れが近づいているそんな予感がしていた
私たちは今年で十六
一人前の大人の仲間入りをする成人の儀が近づいていた
両親と年の離れた兄はそれに併せて私たち二人の先行きを決めたようだった
兄はこの国に残り年の離れた兄の補佐をそして、私は隣国の王子に嫁ぐ
太陽と月の名を与えられ生まれたときから決して離れることのなかった私たちの別れが決まったのだ
どんなに堅く抱き合っても一つに戻らぬ魂がどれほど悲しかったことか
いっそ、溶けて一つになってしまえばいいとお互いの体温を何度確かめたろうか
どうせ二度と会えなくなるのならお互いの体を引き裂いて無理やりにでも一つになりたいと願っていたあの日
お互いの運命が変わった日がやってきたのだった
空を焼く閃光が大地を朱く紅く染めていった
少しずつ麻痺していく手足の感覚と戦いながら大地と同じように朱く染まる自分の体を見つめかすかに息を吐いた
横に立つ人影が息を飲むのに気づいて顔をあげたけれどその人の顔はよくわからなかった
とうとう手足の感覚は完全に麻痺しつないでいた手がすり抜けるのを感じた
地面に倒れ伏し意識を手放した瞬間、見えたのはあの人の泣き顔かもしれなかった
私の予感は当たるのだとあの人はいった
泣き虫のあの人を一人置いて先に逝くのはちょっと心配だったけれど私はそのまま意識を手放したのだった
あの人に再び出会えることを心のどこかで願いながら
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