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塔の外壁に一定の間隔で空いた窓から射し込む光で足元は見えるが、足裏から伝わる冷たさに身体が震えた。
細い塔の内部を壁に沿って螺旋状に伸びる階段は、かなりの高さまで続いている。
それなりに幅もあるのだが手摺もなく、落ちれば受けとめる物もなく真っ逆さまだ。
そんな恐怖を感じる余裕もない程、湊の心は一点を見つめていた。
風に煽られる髪が、スカートが邪魔だ。
動きの悪い足がもどかしい。
ああ、今ここにシリウスが飛んできてくれればいいのに……その名の通り、全てを焼きつくす焔でこの雪と寒さを払ってくれたらいいのに……
近づいてくる足音と、怒号を振り切るように天辺を目指す。
階段の螺旋がどんどん細くなり、塔の先にあるステンドグラスの光が足下に届いた時、視線の先に細長い扉が見えた。
「出口……」
「待てっ…………」
声を無視して、湊は細長い鉄の扉を押し開き、思わず目を見張る。
「シリウス……」
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