踏み出す一歩

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二人は城を離れ、人目のつかない路地裏でシリウスから降りた。 翼は閉じれば毛並みと同化して見えない。 二人は何とか、もといた宿に戻った。 追っ手が来る危険性もあるが、とにかく二人共、休息が必要だった。 料金は三日分先払いしてある。 この街唯一の宿だが客の顔など一々覚えてないらしく(知らないふりをしているだけかも知れないが)、特に何かを聞かれる事もなく部屋の鍵を渡された。 (出掛けるときは鍵をフロントに預けるシステムになっている) 身につけていた貴重品は取られていない。 部屋に残した荷物もそのまま置かれていた。 暖かな部屋で落ち着くと、湊は扉に向かって呼び掛ける。 『何人も私とサイフの許しなく開くことはない。この部屋のなかで、サイフと私に危害を加えることは出来ない』 熱いスープに硬いパン、蒸したジャガイモを食べて一息ついた頃、やっと、互いに引き離されてからの事を話し合った。 この国の秘密、塔に閉じ込められたレユニオンのこと、その力を使って湊を逃がしてくれたこと、この大陸の王はまだ、湊の力を狙っているだろうことも。 サイフの方は殆ど話すことがない。 捕まってからずっと、あの牢に閉じ込められていたのだ。 「ただ、あいつに手紙を送った」 「あいつって……カリフ?」 サイフは頷く。 泊まっていた部屋の番号は覚えていたので訪ねたのだが、既に空室だった。 「もしかして、私達を助けに行ってるんじゃ…………」 「ん、だからさっき、もう一度手紙を送った」 湊が扉に『呪文』をかけていた時だろう。
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