531人が本棚に入れています
本棚に追加
二人は城を離れ、人目のつかない路地裏でシリウスから降りた。
翼は閉じれば毛並みと同化して見えない。
二人は何とか、もといた宿に戻った。
追っ手が来る危険性もあるが、とにかく二人共、休息が必要だった。
料金は三日分先払いしてある。
この街唯一の宿だが客の顔など一々覚えてないらしく(知らないふりをしているだけかも知れないが)、特に何かを聞かれる事もなく部屋の鍵を渡された。
(出掛けるときは鍵をフロントに預けるシステムになっている)
身につけていた貴重品は取られていない。
部屋に残した荷物もそのまま置かれていた。
暖かな部屋で落ち着くと、湊は扉に向かって呼び掛ける。
『何人も私とサイフの許しなく開くことはない。この部屋のなかで、サイフと私に危害を加えることは出来ない』
熱いスープに硬いパン、蒸したジャガイモを食べて一息ついた頃、やっと、互いに引き離されてからの事を話し合った。
この国の秘密、塔に閉じ込められたレユニオンのこと、その力を使って湊を逃がしてくれたこと、この大陸の王はまだ、湊の力を狙っているだろうことも。
サイフの方は殆ど話すことがない。
捕まってからずっと、あの牢に閉じ込められていたのだ。
「ただ、あいつに手紙を送った」
「あいつって……カリフ?」
サイフは頷く。
泊まっていた部屋の番号は覚えていたので訪ねたのだが、既に空室だった。
「もしかして、私達を助けに行ってるんじゃ…………」
「ん、だからさっき、もう一度手紙を送った」
湊が扉に『呪文』をかけていた時だろう。
最初のコメントを投稿しよう!