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「この世界には、4つの大陸の他に、「プルケリマ」と呼ばれる場所がある。たどり着けるのは「異世界」から人間だけで、その入口には「番人」がいて、訪れた者に問う。『我が問に答えるや、否や』と。番人の問に正しく答えることが出来れば、全ての場所に通じる扉が現れる。但し、間違えれば2度と扉は現れない」
湊は頷く。
それはここに向かう船の中でサイフから聴いた。
「実際に、その問いに答えて扉を開けた人間はいない。少なくとも俺の知る限りは」
「その人達はどうなったの?」
「さあ、この世界に流されてくる人間自体希だし、アリオトみたいな奴もいる。いきなり砂漠に放り出されて、無事に街に着ける人間の方が少ない。お前は運がよかったんだ」
言われればそうなのだろう。
「でも、私は『北の大陸』の呪術士に呼ばれてここに来たわ。他の人もそうなの?」
いや、とカリフは首を振る。
「ここに来る人間が皆、そうとは限らない。意図的に異世界から人一人を召喚するなんて、世界の摂理を強引にねじ曲げる行為だ。それなりの代償を払うことになる」
「代償…………?」
「実際、湊をこの世界に呼び寄せるために多くの術士が力を失ったらしい」
「おい、カリフっ……」
「勿論、奴らが勝手にやった事だ、湊が気にする必要は全くない」
術士の中には指を失った者、黒髪が白髪になったもの、声や視力を失った者さえいたらしい。流石にそれを湊に告げることはしないが。
「それだけ、異なる世界を繋げることは危険だっていうことだ」
「じゃあ、もしプルケリマに行って、私が番人の問いに答えられたとしても…………」
「何が起こるか、予測がつかない。言い伝えでは『世界が滅ぶ』とも」
「えっ」
思いもよらない事を言われ、湊は絶句する。
「まぁ、確認した人間はいない。実際、俺が知る限り、番人の問いに答えられた人間はいなかった…………というか、異世界から来た人間は数人しか知らない」
(言い伝え…………か…………)
カリフは湊がプルケリマに行くのを止めようとした。
そこにはカリフがそうするだけの理由がある。彼がただの「言い伝え」を信じて動く人間ではないことを湊は知っている。
それを口にしないのは、湊をおもんばかってのことか、言えない理由があるのか。
何れにせよ、彼が自ら口を開かないなら、聴いても話さないだろう。
それより、今は他にやるべき事がある。
『朝には4本、昼には2本、夕暮れには3本足の生き物は何だ』
答えは『人間』で幼年期は這って進み、青年期は2本足で、老齢になれば杖をついて歩く。
スフィンクスは自分の前を通る旅人に謎かけをし、答えられなければ食べてしまったという。
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