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「そう思うなら尚更、お前は行くべきだ、プルケリマへ」
「カリフ…………?」
「人柱の少女を助けたいなら、この世界の『不条理』を正すべきだと思わないか?」
「どう言うことだ?」
「この世界へ流されて来る者は、多くはないがいる。だが、その疑問を口にした人間は、俺の知る限り二人目だ」
「二人目?」
首を傾げる湊の隣で、ずっと黙っていたサイフが声を上げた。
「お前、何を隠している?」
サイフと無言のまま見つめ合い、やがて観念したようにカリフは両手を上げた。
「睨むなよ、ちゃんと話す」
そう言って、膝の上で両手を組む。
「五十年も昔の話だ……祖父は砂漠の真ん中で倒れていた男を助けた。男は奇妙な格好をしていた。言葉は通じるものの、ひどく動揺していて『ここは何処だ、何時の時代だ』と、しきりに聴いていたそうだ」
「異世界の人間だったのか?」
「ああ。異世界の人間については今ほど知られていなかったし、最初は「記憶を失くしているか、別の大陸から流れて来たのだろう」と思っていたそうだ。祖父は男を家に住まわせて、生きてゆくのに必要な事を教えた。自分たちがいる大陸のこと、この世界のこと、生きていく術、世界の中心にある『プルケリマ』の言い伝えも」
「その人は、どうなったの?」
「今も健在だ。南の大陸で、お前達もあっただろう?」
そう問われ、湊はサイフと顔を見合わせる。
「…………まさか……?」
「カザフ.アルビレオは異世界から来た人間だ」
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