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両親が離婚したのは 小学生の時だったと思う。
理由はよくわからないが、物心ついた時から父はほとんど家にはいなかった。
時々しか帰って来ないその人に小さかった湊は「また 来てね」と声をかけて 母に苦い顔をされたのを覚えている。
それでも子供の頃の湊は父の事が大好きだった。
たまにしか会わない湊と兄を父はとても可愛がってくれたし、一日中トランプやゲームにつき合ってくれた。
父に別の家族がいると知ったのは中学の時。 夜中の母の電話で「あ…そうかぁ」と察した。
その事実はかなりショックだったけれど、それよりも父との電話で泣き崩れる母の声を聞く方が辛かった。
それでも母は湊の前では一言も弱音を吐かなかった。
親戚の飲食店で夜遅くまで働いて、家事もこなして。
母が倒れたのは3ヶ月前。
短大への推薦入学が決まった翌日だった。
母が勤めていた親戚の飲食店から電話があり、慌てて病院に向かった。
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